2026.05.23 by PLAYDRIVE
ラリー
5月21日(木)、レッドブル・アスリートの勝田貴元が、来週末に迫ったラリージャパンを前に都内のレッドブル・ジャパンのオフィスにてメディア合同取材に応じた。待望のWRC勝利を挙げての母国凱旋。季節の変わったラリージャパンに挑む心境など、様々な質問に応えた。
WRCウイナーとして迎える母国戦となりますが、これまでと気分や気持ちの変化はありますか?
勝田「今年はで初優勝を挙げ、続くクロアチアでも連勝できたことで、確かな自信を持てました。昨年までのラリージャパンはシーズン終盤の開催で、自分でも1年の集大成、シーズンの締めくくりという意識が強かったのですが、今年はシーズン中盤での開催になり、今までとは雰囲気や心境が大きく異なります。ホームで良い結果を出したいという思いは変わりませんが、余計なプレッシャーがなく自分のやるべきことに集中できるかなという心境です」
WRCで連勝した感想と、それによって新たに見えてきたものを教えてください。
勝田「これまでずっと追い求めていた初優勝をケニアで達成し、直後のクロアチアでも勝って連勝できたことは、自分でも驚きました。ただ大事なのは『良い結果を出した後』だと考えているので、地に足つけてやっていきたいですね」
今シーズンここまで活躍されている要因は何でしょうか?
勝田「これまでWRCに参戦してきた経験値もありますが、今年は特に精神面でのコントロールができるようになったのが大きいです。今までのように間違ったタイミングでの無謀なプッシュを抑えられるようになったというのは自分でも感じていて、それが安定した結果に繋がってるんじゃないかと思っています。ただ、それも時には逆効果になることもあるし、攻めないと勝てないのは変わらないので、展開をしっかり読みながらラリーウイークの組み立てをさらに研ぎ澄ましていきたいですね。あとはチームの支えに加え、オィットさん(タナック)からのサポートが良い影響を与えていると思います」
ラリージャパンで勝利を挙げるためのポイントはどこになると思いますか?
勝田「昨年までと開催時期が変わるため、コンディションは多少変わってくると思います。タイヤの使い方も変わると思いますし、今まで使っていたソフトタイヤが、気温上昇によってうまく機能しなかったり、オーバーヒートしやすくなる可能性があります。また、落ち葉は開催時期が変わっても重要なポイントだと思います。林道特有の木々が生い茂っているところは、実際に走ってみないと分からないと思います。ただ、ステージ自体は昨年までと大きくは変わらないので、状況に変化に対応しながら、自信を持って冷静に戦えば、セブ(オジエ)や、エルフィン(エバンス)を相手に優勝争いもできると思うので、そこを目標に頑張ります」
WRCで優勝して、周囲の環境に変化はありましたか?
勝田「WRCを優勝したことで、さまざまなメディアに広く取り上げていただき、今までラリーを知らなかった層にまで競技の存在が届いたっていう話を聞くようになりました。これからもっと結果を出して、トップで戦う唯一の日本人選手として、そういった機会を増やしていきたい。これまでより責任感を持って戦っていきたいです」
相性が良い、あるいは走っていて楽しいと思うラリーはありますか?
勝田「個人的にはフィンランドです。4年間ずっと住んできて、ラリーのイロハを学んだ場所でもあるので、フィンランドの道が最も気持ちよく走れます。また、フィンランドで好成績を残すというのは、ラリードライバーとしての技量を証明する一種のステイタスだと考えている選手も多いので、そういった意味で僕も走っていて楽しい、かつ良い結果を出したいという思いがあります。」もうひとつはこの間行われたカナリア諸島です。インパクトの少ない綺麗な舗装路は、カート時代の経験を活かせますし、何より楽しく走ることができます」

様々な路面に対応するコツや秘訣はありますか?
勝田「コツや秘訣というより、ラリーは経験値がモノを言うスポーツなので、同じコースを走るのでも、晴れと雨では大きく違うし、季節や道ごとの状況によって走らせ方も変わってきますので、とても難しいです。同じ選手権で舗装路を走って、砂利道も雪道も走るっていうのはWRC・ラリーの難しさでもあり、魅力でもあると思います」
様々な路面を走る上で、楽しい・快感だと思う瞬間はどこですか?
勝田「ラリー中それぞれのコーナーで限界ギリギリ、自分でもこれ以上は無理という完璧に近い走りができた瞬間は、自分の中で快感がありますね。自然が相手なので簡単ではないですが、コンディションを見極めて限界を攻めるというのは、ラリーならではの楽しさだと思いますし、高揚感もあります」
近年味わった挫折や、そこからの成長について教えてください。
勝田「今までたくさん経験してきて、ひとつに絞るのは難しいですが、ラリーに転向した当初はリタイアも多く、選択が間違っていたのではないかと悩んだ時期もありました。しかし、ここまでサポートしてくれた人たちの気持ちに報いたいという思い・感謝が原動力になりました。そういった経験があるからこそ、失敗したときに早く立ち直り、次へ向けて改善していくマインドを培うことができました」
勝田選手の人生における最大の転機は何でしょうか?
勝田「すべての経験が現在に繋がっているので、ひとつだけに絞るのは難しいですが、あえて挙げるならカート時代に3名しか枠がない日本代表枠を勝ち獲って、世界選手権に出場したことです。結果は7位に終わりましたが、途中までトップを走っていたこともあってレース後は『悔しい』、『世界で勝ちたい』という思いが芽生えるきっかけになりました」
大切にしているルーティンなどはありますか?
勝田「ふたつあって、ひとつ目は『ココイチ(カレーハウスCoCo壱番屋)のカツカレー』をラリー前に食べることです。カート時代にこれを食べた翌日のレースで優勝して以来、ずっと続けています。ふたつ目はラリーの期間に入る前にトイレを徹底的に掃除して綺麗にすることですね。このふたつは今でも必ずやっています」
優勝や連勝について、お父様(勝田範彦選手)とは何かお話しされましたか?
勝田「父はすごく心配しつつも喜んでくれていますが、家族だからこそ僕の性格をよく理解してくれているので、あえて深くは聞いてきません。連勝したときも『おめでとう』というメッセージはもらいましたが、先ほども言ったようにカート時代からそうなんですが、良い結果出したあと、それをどれだけ継続できるかが大事なんです。家族みんなが応援してくれていますが、ワイワイ大騒ぎするような雰囲気をあえて出さないように見守ってくれています」
ずばり、今季チャンピオンになれる確率はどれくらいでしょうか? また具体的に狙っているラリーなどはありますか?
勝田「数値化するなら50%以上はあると考えています。ラリージャパン以降はグラベルラリーが続くため、ランキング上位ゆえの出走順の不利などもあります。そういった局面では自分との戦いが続きますが、自分をコントロールして最後まで戦い抜きます。また、少なくともあと2回は勝ちたいです。特にラリージャパンとフィンランドでは絶対に勝ちたいですね」
最後に、これからレーシングドライバーを目指す子どもたちへ伝えたいことはありますか?
勝田「現役ドライバーとしては活動が限られてしまうんですが、将来的には子どもたちがラリーの世界に挑戦しやすい環境やルートを整備していきたいという思いがあります。また、子どもたちには『とにかく大きな夢を持ってほしい』と伝えたいです。僕自身、ラリーへの挑戦を始めた当初に『ラリーに転向してWRCを目指す』と言った際は周囲に笑われましたが、それでも強い思いを抱き続け、周りのサポートを得て目標を実現させました。夢を目指す子どもたちには、現実的な枠の中に小さくまとまることなく、自信を持って大きな夢を追えるような環境を作ってあげたいですね」
