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D-SPORT Racing Team挑戦の軌跡 vol.1〜2022年を振り返って

2023.03.30 by PLAYDRIVE

PLAYDRIVE / 2022年のWRCラリージャパンに出場したコペンGR SPORT

先日、ダイハツ・ロッキーでのTOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ参戦を発表したD-SPORT Racing Team。今シーズンもすでにK4GPへの参戦や、「D-SPORT&DAIHATSU Challenge Cup 2023 沖縄」に殿村裕一監督と相原泰祐選手がアドバイザーとして参加するなど、精力的に活動を始めている。今回はD-SPORT Racing Teamを率いるダイハツ工業の殿村監督と、実際にステアリングを握り様々なカテゴリーに参戦した相原選手に話を伺った。

──D-SPORT Racing Teamが動き出した2022年シーズンの総括をお伺いできますでしょうか。
殿村:ダイハツにとっては『モータースポーツを起点とするいいクルマづくり元年』でした。TGRラリーチャレンジや全日本ラリー選手権に積極的に参戦しながらクルマを鍛える一方、ダイハツチャレンジカップというイベントも復活でき、“モノづくり”と“コトづくり”の両方を推進することができたかなと思っています。その集大成として、11月のWRCラリージャパンではJRCar3クラスで優勝することもできました。D-SPORTさんと一緒にその機運を膨らませることができた点は非常に良かったなと思います。

SPK / WRCラリージャパンではJRCar3クラス優勝を達成した。


相原:日本全国津々浦々、TGRラリーチャレンジや全日本ラリー選手権のフィールドを走らせていただきました。特に印象的だったのは、コペンGR SPORTでグラベルの道を走ったことです。これが、“いいクルマづくり”という意味ではすごく学びになりました。グラベルはクルマへの入力が大きくなるのでもっといいクルマづくりに役立ちます。それに、あらためて軽自動車の出力で普通車と競い合うことの難しさを感じました。トレッドが狭く轍が合わなかったり、大変な部分もあったのですが、その一方、四隅まで手がとどく一体感や低重心から生まれる楽しさは格別ですし、全国どこに行っても、コペンファンの方々に応援いただいたことが印象に残っています。特にラリージャパンは印象的で、走行距離も長く、これまでになかったような不具合も発生しました。でもそれを改善して、完走することができたんです。本当に参戦して良かったなと思います。

Manabu Takahashi / グラベルラリー挑戦で見えた課題も大きな糧に。


──モータースポーツ現場ならではのエピソードを聞かせてください。
殿村:ダイハツのシャシー設計部のエンジニアも現場に来てくれて、不具合の改善が現場で進むような体験がたくさんできたことが大きいですね。それにラリージャパンで、Rally1マシンと軽自動車が一緒に走っている景色がとても印象的でしたね。

相原:全日本ラリーの丹後では、ライバルチームたちと切磋琢磨している時にブレーキが悲鳴をあげてしまいました。メカニックはもちろん、D-SPORTさんや我々ダイハツのエンジニアも含めた色々なメンバーで案を模索し、バックプレートを改良してその場で不具合を改善することができたんです。言葉にすると簡単ですが、短時間でPDCAサイクルをまわす経験ができました。エンジニアたちはその時のゼッケンを設計室の壁に貼って、忘れないようにしてくれています。どんどんダイハツ社内でも認知が広まって仲間が増え、ダイハツ車のもっといいクルマづくりにつながると思います。

Naoki Kobayashi / ラリー丹後ではアイデアを出しあいブレーキの課題を解決。


殿村:今のクルマはとにかく安定サイドを追求して、制御の塊になっている部分があるんです。昔であればオーバーヒートしてしまったかもしれないけれど、オーバーヒートが起こらない代わりに出力がダウンするとか。でもモータースポーツでは特に高負荷下で走らせるので、制御でままならない面もたくさん出てきてしまっています。それが今のモータースポーツならではという部分ですね。

相原:制御の面はまさにそうですね。加えて、クルマを作るうえで一番譲れないのは乗る方の安心安全。そこからすると、モータースポーツをやることでブレーキやボディ剛性など、クルマづくりの基本を、もっともっと磨こうというきっかけになったんじゃないかと思いますね。今まで、『モータースポーツは特別なところ』だった認識が『クルマを鍛えるためのフィールド』に変化し始めたかなと。

──実は市販車の開発とモータースポーツは地続きになっている部分もある。
相原:そうです。我々はラインで生産した普通のクルマをベースに競技に取り組んでいますから、そこで出た課題が直接、今後のクルマづくりの知見になっていくので、とても効率がいいなと思っているところですね。

──会社の中でも変化を感じる部分はありますか?
殿村:ダイハツ自体は長年モータースポーツ活動をお休みしていましたし、あらためてモータースポーツのような高負荷の入力がある体験は久しぶりでした。実戦では、テストコースを走っているだけでは発生しない、プラスアルファの領域まで負荷がかかることがあります。開発陣への体験や知識の広がりという意味では、非常に良かったと思いますね。若いエンジニアの中には、こうした領域を初めて体験するような人もいるわけです。

Naoki Kobayashi / 積み重ねた知見は開発陣への体験や知識の広がりにも役立つ。


相原:もともと、ダイハツのモータースポーツは勝つため、マーケティングのためのモータースポーツでした。今は結果を追いかけるだけではなく、“もっといいクルマづくり”を軸に置くことでダイハツの全車両が良くなるように改善を続けていく活動と位置づけています。スポーツカーを鍛える活動ではコペン、新プラットフォームのDNGA(Daihatsu New Global Architecture)を鍛える活動ではロッキー。さらには、最もお求めやすいベーシックから鍛える活動ということで、K4GPに出たミライース。この三本柱を鍛えるという活動方針は分かりやすいなと。実際にクルマづくりに活きていますし、社内でも非常に理解が進んで、今後のダイハツ車がもっと良くなると思いますね。

殿村:22年が再開の年だったので、今年は拡大していければと思っています。ロッキーやミライースなど車種も増えますし、D-SPORT&ダイハツチャレンジカップも、沖縄をスタートに今年は複数回やれればと思っています。それに今後は販売会社の方にも活動が少し広がっていく可能性もありますね。全体が一丸となってモータースポーツに取り組む格好になっていくと思います。

Naoki Kobayashi / K4GPには“ベーシック”を鍛えるべくミライースで参戦。


<vol.2に続く>




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